「陰 花」

足りないものが そこには在るのだろう

陽の翳る場所を聖域として
陰花は密かに実を結ぶ
月光に照らされた苗床を求めるのは
彼等にとって

世界が病んでいるからだ

あまりの虚無に放心し立ち尽くしている その瞬間ですら
ひとときも躊躇せずに誰かが奪い続ける こころの潤いを
眼前に広がる薄雲に覆われた砂漠の何処で癒せば良いのか

じっとりとまとわりつく湿り気に 僅かに ほんの僅かに
毒が
含まれていることを

知りながら無力に佇む狂気を 遂に持ち得なかった草木が
闇に助けを求めただけのこと それだけのこと

麻痺したものは 過敏なるものを指差して笑うはずなのだ
逃げろ陰花よ
挑発を受けるな 平気を装うな 笑い返すな
こころ捉えられぬとあれば おまえの器は拘束されるだろう
薄汚れた手が喉に侵入する 閉じた顎は無理矢理に開かれる
押さえつけられ その微量の毒と湿気を吸わされる

全ては強制されるのだ 陰花よ

眼球の硝子体の内側が清々しい狂気で完全に埋まり一滴の水も出なくなるまで