特殊命の一つである殉命。
この運命は「白紙の運命」である。

真っ白で何も書かれていない。
本人に、いかなる「試練」も「恵み」も準備していない。
したがって、その運行の速度は極めて速い。
すべての運命の中でもっとも機動力を持つのが「殉命」である。

さながら彗星のような猛烈な速さで、
すべての運命の間をすり抜けて行く。
そしてその「すり抜ける瞬間」にこそ「殉命」の使命がある。



「殉命」は「他の運命を複写」する運命なのだ。



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本来、個々の運命は近付いたり離れたりするだけで、
お互いに交わる事は無い。

しかし時に人生においては、あまりに「因縁を感じさせる出来事」が発生する。
愛を裏切ったものは愛に裏切られ、
盗んだものは同じように盗まれ、傷つけたものは傷つけられる。

そこには必ず「殉命の軌道」が関係している。
「殉命」の動いた「軌道」には「因果の網」が生じ、
他の星々が、その網にかかるのだ。

「殉命の軌道上」では、
先に起こる事は前に起こった事であり、
前に起こった事は必ず先にも起こる。

人が日常の出来事から、強烈な「因果・因縁」を感じる時は、
必ずその場の過去に「殉命の影」がある。
それは「彗星の白き尾」である。
時間の中に長くたなびき、ゆっくりと消えて行く「網」である。

ではこの殉命に同乗する本人の人生は、いかなるものか?

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殉命を持つ人間の人生は「因果の完結」にその大半を奪われる。

自分のとった行動は自分の人生に「複写」され、
そこを通る新しい星から「因果」として本人に返される。

良き行いは、未来に全く他の誰かから。
悪き行いも、未来に全く他の誰かから。

当人同士で因果の完結を見る事もあるが、ほとんどの場合は、
「その当時にそこにいなかった誰か」から「同じ事」を返される。

それは殉命が記憶している過去なのだ。
その記憶が「偶然通りかかった他の運命に振りかかる」。
振りかけられた運命は、その振りかけられた物事に沿って、
反応を殉命に返す。こうして「因果」が完結する。





殉命の過去は消えない。

過去に裏切りを行なえば、それは殉命の「白紙」に書き込まれ、
それを背負ったまま運命は走る。裏切った相手が離れて行ってもである。

やがて通りかかった新しい運命に、その影響は起こる。
全く違う相手から、
殉命はまるで「過去の裏切りの代償を受ける」かのように裏切られる。
こうして裏切られて殉命は「白紙」に戻るのだ。

良き行いも同様である。
行いを与えた相手が「遠く離れて去ってしまった」後に、
ある時全く別の「誰かから」その行いの「代価」を受け取る事になる。

性別、年齢、職種に関わらず、この運命の性格によって、
殉命は周囲に「因果を作り出す」運命である。

よって殉命を持つ人は、常に「覚悟して行動する」必要に迫られる。
過去の因果を受け入れる覚悟。未来に因果から返される覚悟。
その両方を必要とするのが殉命の生き方となる。



しかしやがて時間と共に、運命の速さは落ち着き、
殉命は「従命」に降りる。

その後は、本人の運命は「従命」にしたがって運行するようになるのだ。
長い長い歳月と、迷走の後に。